水分摂取量が日本人の認知症リスクに及ぼす影響

提供元:ケアネット

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公開日:2025/11/13

 

 適切な水分摂取は、高齢者の認知機能の維持に不可欠である。しかし、水分摂取量の促進を推奨する前に、解決しなければならない課題が残存している。まず、水分摂取量と認知機能の改善との関係は線形であるのか、そしてもう1つは、この関連性を媒介する根本的なメカニズムは何かという点である。これらの課題を解決するため、北海道・北斗病院の保子 英之氏らは、日本人高齢者を対象に、水分摂取量が認知症リスクに及ぼす影響を検討した。PloS One誌2025年10月6日号の報告。

 対象は、高齢者向け介護施設に入所し、看護を受けている日本人高齢者33例。水分摂取量は、日常的な臨床診療の一環として記録した。認知機能は、入所期間中にミニメンタルステート検査日本語版(MMSE-J)を用いて2回評価した。さらに、超音波検査を用いて左右の総頸動脈の血流を測定し、約82.6±14.9日の間隔で評価した。除脂肪体重(LBM)当たりの水分摂取量、MMSE-Jスコアの変化、超音波検査パラメーター間の関係は、ノンパラメトリックブートストラップ法を用いたスピアマンの線形相関分析により解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・相関分析の結果、1日当たりの水分摂取量が42mL/LBM(kg)未満の場合、水分摂取量とMMSE-Jスコア改善との間に正の線形相関が認められた(p[FDR]=0.012)。
・さらに、水分摂取量は右総頸動脈の抵抗指数と負の相関が認められ(p[FDR]=0.046)、脳血行動態の変化が示唆された。

 本研究の主な限界として、臨床上の制約により、施設入所前の水分摂取量や水分状態を評価できなかったこと、観察研究であるため、水分摂取量、認知機能の変化、脳血流パラメーター間の因果関係を推論できないことが挙げられる。

 著者らは「適度な水分摂取は、認知機能改善と線形の関連が認められており、この効果は、脳血行動態により媒介される可能性が示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)